2011年 03月 17日

転載:京都大学原子核工学専攻助教の秋吉です。私個人が分かる範囲で書きます。

転載・リンクフリーらしいので
ミクシィの記事より。
わかりやすいですね。

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■被曝から身を守るには…
(読売新聞 - 03月13日 00:18)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1533263&media_id=20

京都大学原子核工学専攻助教の秋吉です。
出先のためレスポンスが遅れました。
立場上軽率に物をいうべきでないと自重していた部分もあります。
が、やはり非常に社会的に関心が高いと思いますのであくまでも私個人が分かる範囲で書きます。

とりあえずこの記事はあまり参考になりません。
外部からの放射線防護の三原則を書かれても。

まず、発電所至近距離でない限り外部被曝は無視できます。
瞬間的な敷地境界での最大値(1.5mSv/h)でも、私が実験でしょっちゅう浴びたことがあるレベルです。まあ、トータルそこにいる時間が効いてくるんですが、速やかにレベルが下がったことから、短半減期の核種の放出による物だと思われます。

強烈な放射線が飛び交っている環境では、空気も放射化します。
ただし、半減期(強さが半分に減る時間)がせいぜい数分程度で短いため、ほぼ無視できます。

そのほかに気体として放出される核種として、核分裂によって発生する希ガスが考えられます。
最も半減期が長いキセノン-131m でも 11.8日程度で半減します。

http://www.inss.co.jp/seika/pdf/11/214.pdf
「一般的に原子力防災において評価対象となる核分裂生成物は希ガスとヨウ素であるが,希ガスの放射能量は24時間で約5分の1(0.5MeV 等価
換算値では約40分の1)程度まで低下することが知られている.」

そして、希ガスはほとんど化学的に反応しない原子であるため、体内に取り入れられることもほぼありません。

結局、問題となるのはヨウ素の放射性同位体 I-131 と言うことになります。ヨウ素は化学的に極めて活性で、特異的に甲状腺に蓄積されることが広く知られています。
このため、体内にこのヨウ素の放射性同位体が取込まれると、化学的性質は普通のヨウ素と同じですから、甲状腺に取込まれてしまいます。
ただし、事前にしっかりとヨウ素を摂取していて、「満タン」の状態にしておくと、それ以上ヨウ素を摂取してもそのまま体外に排出されます。事後であっても徐々に同位体置換されますから全く無意味でもありません。I-131 自体の半減期は8日ですが、出来る限り早く排出する必要があります。

日本人は幸いにも世界的に見ても極めてヨウ素をたくさん摂取する民族であると言えます。昆布などの海草類にヨウ素が豊富に含まれているからです。

福島から東京まで飛散してくることは現状ではまず考えられませんが、基本的な知識として、万一の時には知っていて損はないと思います。
まあ、昆布には 1kg あたり 2000Bq の放射性元素 K-40 が含まれていたりしますが・・・この程度の量は、まず無視して構いません。

それから上の資料では挙げていませんが、水素の同位体のトリチウム(H-3)も気体として放出され得ます。半減期は12.3年で、比較的長いと言えます。非常にエネルギーの低いβ線を放出するだけのため、体外からの被曝は完全に無視できますが、水や有機物として体内に取り入れやすい核種です。これも、普通の水を摂取し続けていれば、次第に同位体置換されて体外に排出されます。また、絶対量として上の二つよりも少ないと思われます。

汚染された衣類の処理を気にしている方がおられますが、上を読めば分かるとおり、しばらく置いておけば無くなります。水洗いできればそれでも構いませんが、現地では水が無くそれは不可能だと思いますので、隔離して置いておくというのがベストかと思います。

それから、これだけは覚えておいて下さい。
今回の件が無くても、人類は自然界である程度の量を被曝しています。

日常生活でどの程度被曝しているかは、
http://218.224.231.254/~akiyoshi/Temp/
に置いた、原子力・エネルギー図面集_2010.pdf の120ページを参照して下さい。

元ネタは
http://www.fepc.or.jp/library/publication/pamphlet/nuclear/zumenshu/index.html

胸部レントゲン一回で 50μSv, 国際線片道で 100μSv と言うのを覚えておくと、大体比較が可能かと思います。世界平均では年間平均 2.4mSv となっています。ただし、その数倍の放射線をずっと浴びている地域もありますが、特に発がん率が上昇すると言うことは確認されていません。
身近なところで一番大きいのはCTスキャンで、胸部断層撮影で 6.9mSv、つまり 6900μSv 被曝します。さすがにこれはやたら浴びるとまずいと言うことで一度受けると一定期間受診できません。ただ、リスクはあるがそれで病気が発見できるなら、と言うことで必要であれば使うことをためらう必要はありません。すぐ影響が出るレベルよりも二桁程度小さいからです。

もちろんこれは外部被曝の量で、放射性物質自体を体内に取込む内部被曝とは比較できませんが・・・世界平均の2.4mSv/年 の半分程度は、空気中に含まれるラドンから受ける内部被曝です。ラドンとその娘核種は、α線、β線、γ線を体内(肺)で放出します。この程度の量は人類みんなが浴びている量だと思って下さい。石造りの建物が多いヨーロッパではずっとこの量は多くなります。ラドンガスは岩石に含まれるウランやトリウムから放出されるからです。コンクリートでも同じで、木造の通気性が良い日本家屋ではずっと少なくなります。

他の方の書いた資料として、参考となる資料として、
http://smc-japan.sakura.ne.jp/?p=752
を挙げておきます。私から見てほとんど異論がありません。

とにかく今回の事象は、現在のところ固体も含めた核分裂生成物を広範囲にまき散らしたチェルノブイリとは全く異なります。今後状況がどうなるか分かりませんが、分かる範囲で書いてみました。

各種のサーベイメーターやGe半導体γ線検出器を持つ我々に、何か出来ることがあったら是非教えて下さい。現地に行きたいのは山々ですが、現状でそれは非常に難しいと思います。が、行ける物であれば私は行くつもりです。郵送可能なら受入窓口があれば何かしたいとも考えていますが・・・

なお、この拙文で構わなければ、リンク・転載フリーです。
文責は、負います。

2010/03/14 追記

今回の事故では炉心温度が上昇し、一時期核分裂生成物(FPと呼ばれる、いわゆる核のゴミ)が放出されていたようです。炉の近くでセシウム-137 が検出されていたようですから。これらは本来固体なのですが高温で蒸発したようです。大気放出後、冷えて微粒子の固体になっていると思います。
これらの核種は寿命も長いため、取扱がやっかいです。
ただ放出されている時間は限られていますし、量も報道されている範囲では大したことはありません。
また、放射能と言っても化学的には普通の物質と何ら変わりません。
どんどん伝染して増えていくようなこともありません。
インフルエンザ対策でやっているような、手洗いが一番有効です。
また、野菜などは洗ってから食べるなど、ごく普通の対応でほとんどが防げます。

それから、コメント欄でも書きましたが、家庭用のエアコンは外気を取り入れません。中の空気をグルグルかき混ぜるだけです。

とにかく、「現状では」過度に不安になる必要はありません。
正確な情報を今後も分かり次第お伝えしていきたいと思います。
とりあえず帰学し次第もう少し資料を調べて書き込みます。
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by writetoyou | 2011-03-17 00:57


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