人気ブログランキング | 話題のタグを見る

いつか書く手紙

write2you.exblog.jp
ブログトップ
2007年 04月 15日

「また来てね、ともう言えない」とおばあちゃんがいう






今日で
祖父母のやってきた寿司屋が
仕舞いなので

昼に
カウンターで
弟と
ハンバーグカレーを食べました。

なぜハンバーグカレーかというと
二人とも
酢飯が食べられないからで

寿司屋の匂いが
まったく駄目なのです。


祖父母の家だけでなく
わたしの家も寿司屋で

小さな頃から
舎利の匂いを嗅ぎすぎたのか
食わず嫌いです。


祖母のハンバーグカレーは
滅法おいしくて
感動的でした。


店をやめると聞きつけて
ありがたいことに
惜しんでくれる人たちが
おおぜいいて下さって

この最後の二週間は
毎日
昼も夜もお客さんが来て

二階のお座敷にも宴会が入り
出前の注文もひっきりなし


わたしと弟が
カレーを食べている間も

カウンターには
若い夫婦とその妹、あと小さな子ら
また昔店で働いていたおばさんとその友達

とても賑やかでした。


若い夫婦は
もうお愛想(お勘定)で
立ち上がり

すると
おじいちゃんが
寿司折を渡します。
今日じゅうに食べるよういい含めて。
なまものやからな
と。

おばあちゃんが
「二千八百円」
といいました。

若い男の人は
「そんな。
全部入れて下さい」
といいました。
おばあちゃんは
「いいの。
また来てね
いうて
もう言うてあげられないから」
といって
「ありがとう」と
にこにこしています。

五人であれだけ飲み食いして
二千八百円のはずがありません。


祖父母はもう
どのお客さんからも
かたちばかりのお代しか
頂いていないようでした。

気をつけて
聞いていたら
他にも
千八百円とか
五千円とか
でたらめともいえる
値段ばかり。


わたしはカレーを
もぐもぐと
飲み下しながら

涙が出そうなので
ただカレーを
もぐもぐと
食べました。


サラダも
お漬け物も
筍の煮たのも
食べました。
おいしい。



そしてそのあと
その若い夫婦と子どもたちとが
外へ出るときに
おばあちゃんも
一緒に出て
お客さんが連れてきた犬を見ながら

「ゴンタ(その犬の名前)は元気ね、
顔の色が違う。
セナ(祖父母の家の犬)はもう
毛が真っ白くなっちゃって」

などと話していました。

夫婦のうち
旦那のほうが
「ゴンタはラブラドールだけれど
セナはゴールデンレトリーバーだから
種類が違う」
というようなことをいいました。

続けて
「ゴンタも末広(祖父母の寿司店の名です)のお客さんに
紹介してもらって
もらった犬なんだ」
というようなことをいいました。

お店では
おじいちゃんとばあちゃんとお客さんとの間だけではなく
お客さん同士の結びつきもあったのです。


車に乗るお客さんを
わたしも一緒に
店の前に立っていて
見送りました。



昨日は風が強くて
寒い寒い日で
雨も降っていたのに

打って変わって今日は
ほんとうにいいお天気で

お店を閉めるのに
めでたい、
ふさわしい日で
よかったと思いました。

by writetoyou | 2007-04-15 19:47 | 家族


<< 千曲川      わたしを取り囲み、わたしを作っ... >>